白谷雲水峡
しらたにうんすいきょう

863m

時間と命を紡ぐ島、屋久島。
個性豊かなコケワールド、白谷雲水峡
もののけ姫の森を満喫!

 
エリア 番外編 日程日帰り(宿泊) 日付2005.12.07 天候雨時々曇り
同行者私、ツアーガイド、山梨の若夫婦(ツアー客)、計4名 TIME(休憩含む)5時間17分
コース 白谷雲水峡駐車場(9:31)→白谷山荘(12:42)食事休憩→もののけ姫の森(13:21) →白谷雲水峡駐車場(14:48)

カシミール5万分の1地形図より作成
【参考】国土地理院2万5000分の1=宮之浦岳



白谷雲水峡入り口の駐車場。無料、舗装駐車場、区割り有り。
約20台の駐車スペースがあり、路線のバス停もある。
入り口には水洗トイレが併設されている。

駐車場

宮之浦から県道白谷線を通って、
白谷雲水峡へ12km、約30分です。
途中、道路拡幅工事が行われており、走行に注意が必要です。

宿泊ホテルがあるのは島の南側(尾之間温泉)。時計の針でいうと6時のあたりです。宮之浦は2時のあたりになります。 ホテルでは陽が差し晴天でしたが、7時50分ホテルに迎えに来られたツアーガイドの車で北上し宮之浦へ向かうにつれ、 黒い雲が空を覆ってきました。時折小雨も降っています。島の南と北でまったく天気が異なるのです。 これが屋久島の特徴です。自然の不思議、島の多様性の良い例だといえます。
(写真左)
宮之浦から県道白谷線を走り、山間部に入ります。
標高をかせぐ途中で左手に宮之浦の街並みが見えてきます。
宮之浦は屋久島で一番大きな町です。




出発

9時31分
宮之浦へ向かう途中で、ホテルに寄り山梨県から来ている、30代のご夫婦を乗せ、本日のツアー総勢4名(自分、山梨の夫婦、ガイドの堀江さん)で 駐車場に到着しました。
支度をしている最中に天気は雨に変わっています。
ガイドさんの指示で4人で体をほぐす体操をし、出発です。
登山道入り口は、駐車場への道を戻り白谷川を橋で渡った左にあります。


白谷入口

1分ほどで案内所(管理棟)に到着です。
入り口で森林環境整備推進協力金一人300円を払います(ガイド料に含まれていました)。パンフを見ると林野庁で行っているようです。
(写真左)橋の反対側には、水力発電施設の説明用の施設が建っています。ボタンを押すとランプが点くようですが、今日は故障中でした。


入口で、ガイドの堀江さんから白谷雲水峡全体の概要と、本日のコース概要について説明を受け、 整備された石の階段をゆったり進んで行きます。
いつもは単独行で、どんどん先へ進んでいましたが、今日はまったく違います。自然と対話しながら自然の一部になって 散策をします。
弥生杉(「森の巨人たち百選」に、縄文杉、紀元杉とともに挙げらている)を巡る弥生杉歩道は、土砂崩れのため 現在も通行止めのため、原生林歩道を真っ直ぐ進みます。)


「憩いの大岩」

初冬にもかかわらず、緑の渓谷を登っていきます。
「憩いの大岩」で屋久島を形作った花崗岩の上を、雨で滑らないよう慎重に進んでいきます。
岩を良く見ると岩の中に白い長方形の物質が見えます。「正長石」と言うものだそうです。


この「正長石」は屋久島のベースである花崗岩の岩や石の中にたくさん見られるものです。
生成段階で比較的に温度が低いと生成されるそうです。
これにより屋久島の誕生が分かるそうです。
写真の石の中に見える白い長方形の物質が「正長石」です。


土埋木(どまいもく)

白玉を散らす清流沿いに、ガイドさんの説明を聞きながら進みます。

土埋木(どまいもく)
屋久島は屋久杉の工芸品が有名ですが、これらは現状ある杉を切って作っているのではないそうです。使っているのは土埋木です。
土埋木とは、『江戸時代に伐採された屋久杉の用途は、主に平木(屋根の材料用であったため、 割れやすい木を選んで加工し易い部分のみを利用しました。利用されなかった枝条や幹、根株 は林内に放置されました。屋久杉は樹脂を非常に多く含んでいるため、200〜300年たった現在 でも腐ることなく残っています。これらの残材を「土埋木」と称して林内から搬出し、貴重な 屋久杉工芸品として利用しています。』・・・なるほど。


二代杉

入口で土埋木と二代杉で屋久島の歴史に思いをはせる。

二代杉(切株更新)
『この杉は切株の上に種子が落下して発芽生育した二代杉です。このようにして世代交代が 行われることを切株更新といいます。屋久島の山ではこのような杉がいたるところで 見られます。まさに屋久島ならではの人と自然との営みが組み合わされた光景と 言えましょう。』
写真の下3分の2位までが一代目の杉です。そこで切られた後、その上に二代目が育っています。
これから先へ進むと、杉のほとんどはこの切株更新で育っているように見えます。大きな杉は江戸時代 にすべて伐採されてしまったようです。切る場所はかなり高い場所を切ったそうです。これは杉の下の方は硬 い上に、裾が広がるようになっており、真っ直ぐな木材が取れないので足場を組んで高い位置で杉を切った のです。現在、樹齢何百年とかいわれている杉は、樹形が悪く木材としての価値が低いものが放置され、 結果残っているそうです。そういえば、縄文杉も樹形が悪く正にその通りだと合点がいきます。

飛流おとし

渓谷の右(左岸)をしばらく進むと、「飛流おとし」があります。
これを見ていると屋久島を象徴する滝だと思えてきます。
花崗岩でできた島は、土壌が少なく、急勾配の川は激流となって駆け下り、海に注ぎます。厳しい屋久島の自然そのもののようです。
マイナスイオンを浴びながら先へ進みます。

さつき吊橋

10時09分。
左手渓谷にかかる吊橋「さつき橋」に到着です。往路では渡りません。今日のコースは周回になっており、 まずは原生林コースを進み、帰りは橋の反対側からこの橋を 渡って帰ることになります。
コースもここからは山道となり、川は全て岩や石を跳び渡ることになります。
大雨の場合は、腰くらいになる時もあるそうです。でも、今日は問題ありません(ホッ)。


雨は降ったりやんだりで、雨がやむと日が差すというロケーションです。
コケの息でけむる林の中を光の帯が差し込む光景は、なかなか幻想的です。
雨で水分をたくさん吸って、生き生きとしたコケから新しい芽がしずくをまとって輝いています。
ここからコケワールドが始まります。


山道は歩きやすく、周りは大きな岩や杉、そして倒木の森です。
写真では分かりにくいのですが、全てがコケで覆われ緑色に見えます。 いかに屋久島は雨が多いかがうかがわれます。
土壌はほとんどなく、岩肌に直接根を張り、杉などの木々が育っているのです。それを可能にしているのが、 大量の雨なのです。まさにこれらの光景は屋久島だから可能なのだと思えます。

二代大杉

一代目が折れ、その上に二代目が生えています。
中は空洞になっており、一代目の親株が残っています。
二代目の根張りに圧倒されます。一代目を覆うように根が張っているのです。
すぐ下の毬藻のようになった玉石のコケの沢に一代目の倒木が横たわっています。


屋久島の杉は一本で森を形成しています。
一代目は大岩のコケの上に芽を出し、その大岩を抱きこむように根張りし大木になりました。江戸時代に途中で切られた後に 二代目が育っています。良く見ると杉以外にも他の樹木が生えています。一本の杉の上に小さな森ができているのです。
これらは、岩や切株など全てコケに覆われ、常時水分がある状態に保たれているから成し得たのでしょう。
屋久島の自然の一端を理解したように思えます。
これこそが屋久島の自然なのだと。

屋久鹿
こちら(関東)で見る鹿に比べ色が黒っぽく見えます。大きさも小型です。
(写真左)頭は左下。右の白いのはお尻。
途中で屋久猿も出てきましたが、こちらは動きが早く写真に撮る前に森の中に消えてしまいました。
時折、猿同士で争うような何頭もの鳴き声が良く聞こえていました。


岩? 倒木?
一面コケに覆われている。


コケの縫ぐるみを着た、小さな切株



ねじりパン



一つの世界



雨の恵みを受け、光り輝いているコケ
【ヤクシマホウオウゴケ】

三本足杉

11時06分。
まるで、スタンドの足のような三本足杉に到着です。
何でこうなったのだろう? やはり切株更新で一代目は朽ち果てて、その後が空洞に残ったのかもしれません。 でも、形を見ると大岩を抱き込み、その後に岩が流失したとも考えられます。
ここでしばし休憩です。

びびんご杉

『切株の上に発芽し、根を下ろした二代杉で樹齢は、300年未満の若い杉です。平成11年に一般公募 による名前募集で名づけられました。親子が肩車(鹿児島弁”びびんご”)をしているような 、ほのぼのしい光景になぞられて命名。』
ウーン、・・・。



これでもかと、コケをつけています。
なにか、いじらしい。

三本槍杉


倒れた杉の上に、3本の杉が生える、三本槍杉に到着しました。



(左)12月4日に降った雪がまだ残る、山道を進みます。
(右)雪の白と、コケの緑のコントラストが鮮やかです。

奉行杉


白谷最大、推定樹齢2000年の奉行杉です。

今を生き続ける巨樹たちのたたづまいから、昔を思い森を進みます。


屋久島森の息吹き




今日は雨の合間に晴れて日が差し、明るいコケの森の表情となっています。
こんなとき「もののけ姫」は出てきません。やはり霧で森が煙るときにこそ出てくるのです。
(今日の景観も、これはこれで素晴らしいです。なかなか見れないそうです)


二代くぐり杉


ここをくぐって楠川歩道に出ます。
昼食場所の白谷小屋はもうすぐです。

三差路


12時26分。
原生林歩道と復路に通る楠川歩道との合流地点に到着しました。


くぐり杉


「願い事を思い、ここをくぐると願いが叶う」といわれる、くぐり杉をくぐります。
お願いは・・・・ヒミツです。
倒れた樹木の上に生えた屋久杉で、倒木はすでに朽ち果てその跡が空洞になったものです。
これも一つの世界を構成しています。


12時34分。 くぐり杉から5分ほどで白谷小屋入口に到着です。
ここから右50m程に小屋があります。
(写真の表示板に右へ5mと見えるが、だれかが0を消したのかもしれません。)

石の階段が見えますが、これは江戸時代に作られた石の道だそうだです。

白谷小屋

白谷小屋に到着しました。ここはトイレもあり、絶好の休憩スポットになっています。 高校生グループも交代で休憩しています(テーブル上の白いものは残雪)。
昔は管理人のいる営業小屋だったそうですが、今は非難小屋になっています。中は広くかなりの人数(40人程)が泊まれそうです。
ここで昼食です。お弁当はホテルで予約して朝渡されたものです(600円)。お弁当の他にバナナとみかんに麦茶も付いていました。
ツアーガイドの堀江さんがコーヒーか紅茶を飲みますかといわれたので、遠慮なくコーヒーをいれていただきました。ガスを持参しており 温かい飲み物をつくっていただきました。寒い中とてもありがたいものです。

七本杉

休憩後、「もののけ姫の森」へ出発です。
白谷小屋からすぐで七本杉に到着します。
この杉は何種類かの着生植物が大きく育って、何本もの枝に見えているのです。
数を数えても6本しかありません。どうやら命名した後に一本折れてしまったようです。

もののけ姫の森

13時20分。「もののけ姫の森」に到着しました。

白谷雲水峡のなかでも最も濃密なコケの森、すべてが緑に見えます。
しずくさえも、風さえも緑の空間に染まっています。
輝く水とコケと岩と樹木が織り成す不思議な世界です。

ここが映画のイメージの基になった場所で、実際に宮崎駿以下スタッフが写生をしたそうです。



楠川歩道

しばし「もののけ姫の森」で、自然の一部になり、神秘の森を楽しんだ後、帰路につきます。
帰路は三差路から楠川歩道を通って戻ります。
『藩政時代、島津藩は島民に命じて屋久杉を加工した平木(屋根を葺く小板)を年貢として 上納させていました。この楠川歩道は、男たちが何日間もかけて屋久杉を伐採し、平木に加工 したものを女性や子供たちが村まで担いで搬出するために使われたと言われており、自然の石 をうまく利用した石積みの歩道になっています。300〜400年の時を経た現在でも当時の状況で 残っており、歴史的にも貴重なものと言えます。』
今歩いている道は400年も前からある道だと考えるだけでワクワクします。同じ石の上を江戸時代の人も 歩いたのです。非常に歩きやすい石の道を下っていきます。
(四つ前の写真”白谷小屋”の上の写真に、400年前の石の道が写っています)

さつき吊橋

14時27分。
朝、横を通過したさつき吊橋に到着です。これを渡って朝の道に戻ります。


駐車場

14時48分。
車を停めた駐車場に到着しました。
ここは路線バスも通っています。一日7便で1時間に一本程度のダイヤでした。
車に戻るとガイドの堀江さんが、また温かい飲み物を用意してくれました。ほんとに助かります。そして、お疲れ様でした。
ガイドさんを付けたおかげで、普段の単独行と異なり、自然がもっと近くなり、スローな屋久島を体験できました。
屋久島の自然がこんなにも多様性に富んでいることを改めて体感できたツアーでした。
屋久島の自然は、四季を通じて山奥でも里でも、晴れでも雨でも、さまざまな表情を見せてくれます。
だからまた来たくなる・・・。


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