鋸山
のこぎりやま

329.5m

石切り場跡の景観と石仏が独特な雰囲気の鋸山。
東京湾を一望できる素晴らしい景観に加え、
歩いた後の天然温泉と新鮮な魚貝料理に舌鼓を打つ。

 
エリア その他 日程日帰り 日付2011.05.22 天候晴れ
同行者’m’、’t’ TIME(休憩、観光含む)3時間33分
コース 鋸山保田口駐車場(9:23)→ 日本寺参道(9:46) → 大仏(10:17)見学(10:22) → 地獄のぞき(10:49)見学(11:13)  → 百尺観音(11:24)見学(11:38) → 日本寺参道出口(12:44) →>鋸山保田口駐車場(13:06)

カシミール2万5000分の1地形図より作成
【参考】国土地理院2万5000分の1=保田



ひょんなことから訪れることになりました千葉県富津市にある鋸山(のこぎりやま)です。 この鋸山の標高はわずか320mですが、千葉県には標高の高い山らしい山はありませんので、わずか 300m程度でも眺めは雄大です。山頂へはロープウェイを利用すれば4分で登ってしまい、観光客は ほとんどがこのロープウェイで頂上を目指します。ロープウェイで山頂を往復してしまうと山歩き にはなりませんので、ルートを選定する際に少しでも千葉の山を楽しもうと、ほとんど人の 来ない保田(ロープウェイの反対側)にある海水浴場の駐車場から歩いて山頂をめざしました。 とは言っても山歩きと言うよりはハイキング程度です。今回訪れた、いわゆる鋸山は曹洞禅宗の日本寺 の広大な境内と一体になっており、地形図にある鋸山本来の山頂はここから離れた場所にあり、 世間一般に鋸山と言うとこの日本寺を指すようです。
今回の山歩きは目的がいつもと異なっており、その第一は地獄のぞきと呼ばれる崖から突き出た 展望台からの眺望です。自分は高所恐怖症ではありませんので、高いところは苦になりませんが、 どうやら同行者は遊園地の絶叫マシーンのノリでそのスリルを期待しているようです。第二は歩いた 後で温泉に浸かり千葉の美味しい海の幸をたらふく食べようとのこんたん(失礼)のようです。 言い換えればよくある観光地めぐりですが、垂直に切り立った日の差さない石切り場跡の景観と、 安置された数多くの石仏が独特な雰囲気をかもし出している境内の散策、さらに眼下の金谷港と 東京湾を一望できる雄大な眺め、そしてお約束の温泉の後は美味しい魚料理をお腹いっぱい 食べるなど、いつもの山歩きでは味わえない楽しさに大満足です。たまにはこのような山歩きもいいもの だと思った次第です。




無料。未舗装の広い駐車場です。海水浴場駐車場。
区割りはありませんが、かなり広く優に100台以上は駐車可能のようです。
トイレ、水、自販機等はありません。

鋸山保田口駐車場

東京湾横断道路(東京湾アクアライン)で千葉県へ入り館山自動車道を富津金谷ICで降り、 国道127号線を館山方面へ南下します。右手に東京湾フェリーの乗り場を見送ると、直ぐに左手に 鋸山ロープウェイが出てきます。これも見送りその先トンネルが3つ連続して出てくるので、 3つ目を通過して200m程先の右手にある海岸沿いの駐車場です。特に表示等もありませんが、 広いスペースが目印です。


出発

9時23分。
身支度を整え出発です。
登山口は駐車場前の国道127号線を横断し、
JR内房線のガード下にある道へ向かいます。
小さな橋を挟んで道は2本ありますが登山道は左の道を進みます。
なお、どちらの道を進んでも登山道を通過した先で合流しています。



左の道のアップです。
道路左わきには、袖看板に「日本寺」「大仏」の表示。
その下の石柱には「羅漢道」とあります。


JR内房線のガード下をくぐり進むと、直ぐに「鋸山」「遊歩道」左への案内板があります。
ここは案内板に従って左折します。
右方向は日本寺の東口管理所前の無料駐車場へ続いています。



遊歩道を進むと間もなく表参道の階段になります。



仁王門に到着しました。
すでに日本寺の境内に入っています。


表参道管理所で拝観料600円を払い、先へ進みます。




写真クリックで拡大します。
境内の地図と歩いたルートを掲載しました。
往路は赤の線、復路は青の線で表示しました。
駐車場は左下にあります。






間もなく正面に石段が現れますが、入口は塞がれ上には進めません。
ここは焼失した日本寺の復興予定地だそうです。
日本寺は1300年前に開かれ、昭和14年11月に登山者の失火により、仏像とお堂すべてを失ったそうです。
曹洞禅宗としてかつては七堂、十二院、百坊を完備し弘法大師などの名僧が訪れ修行した古道場だそうです。
”登山者の失火”というのが気になりますね。



案内書によると境内は十万余坪(33万u)あり、
要所要所には案内板があります。
ここから大仏口へ向かいます。






大仏

10時17分。スタートして54分。
大仏広場に到着しました。
境内は山の斜面にありますが、大仏の前は大きな広場になっています。
この大仏は天明3年(1783年)に完成しましたが昭和41年まで自然の風触により崩壊があり、 昭和44年6月から4年の復興工事で再現されたとあります。
なんでも大きさは日本一とかで、鎌倉の大仏(13.35m)や奈良の大仏(18.18m)をしのぎ、 31.05mあるそうです。


大仏広場の左横に「お願い地蔵尊」があり、遠目にその周りに白い砂のような物が見えます。
そばに寄ってみると、その白い物は5〜7p程の白い焼き物の小さなお地蔵さんでした。
小さなお地蔵さんの表面に名前(又はお願い事)を書いて、大きな地蔵尊の周りに山のように積まれています。
直ぐ横にある売店で一つ500円で売っていました。


大仏の見学のあとは、今日一番のイベント、
地獄のぞきがある「頂上展望台」へ向かいます。



大仏広場から頂上展望台へはひたすら階段を登ります。
途中から振り向いて撮った階段です。



この辺りに来ると観光客が目立ちます。
周りにある石仏を眺めていると、どんどん抜かれていきます。
場所柄観光地なので、自分のような山歩きのいでたちの人はほとんどいません。



案内によると参道は御影石で、2,639段あり日本で2番目の長さがあるそうです。
とはいっても境内はほとんど階段で、どこからどこまでが参道なのか良く分かりません。



山頂展望台(地獄のぞき)

10時49分。スタートして1時間26分。
大仏広場から20分ほどで「地獄のぞきに」のある山頂展望台へ到着しました。



さっそく上の写真の地獄のぞきにの突端に行ってみます。
地獄のぞきは胸まである柵で囲まれており、個人的には北アルプスなどの高い峰々の方がスリルはあります。
でも高い場所が苦手な人は柵を掴んで何とか登っていました。
左の写真は地獄のぞきから右手方向の垂直に切り立った岩の様子を撮ったものです。
人が見える場所は山頂展望台です。



こちらは、上の写真の山頂展望台から見た地獄のぞきがある崖の突端の様子です。
地獄のぞきののぞきです。?!


地獄のぞきから少し離れた場所に、崖の突端の形状が良くわかる場所があります。
実際に突端に居ても、真下が見えないため怖さは感じませんが、
こうやって横から見るとその異様な様子が良く分かります。



山頂展望台からの眺めは雄大で東京湾一帯から伊豆大島まで見渡すことができ、眼下には金谷港が手にとるように見えます。
金谷港と対岸の神奈川県久里浜を結ぶ東京湾フェリーの船が出入りしている様子も良く見えます。
フェリーは東京湾の三浦半島と房総半島の狭い入口を運行し、距離はわずか11.5kmで35分の船旅だそうです。



百尺観音

地獄のぞきの絶景とスリルを味わった後は、山頂展望台から少し下がった場所にある百尺観音へ向かいます。
まるでバーミヤンの遺跡のような景観です。
ここは昔の石切り場の跡を利用して観音様を彫ったとのことです。



この場所から左上を見上げると、先ほどの地獄のぞきの突端が見えます。
下から見た方が足元の岩が無く、空中に突き出た様子が分かり、スリルがあります。
この石切り場の跡は、削られた岩が垂直で非常に高く切り立っており、日もあまり差さず湿って暗い場所です。
ここ鋸山は凝灰岩から成り、建築の資材として古くは防州石と呼ばれ、江戸時代から良質な石材の産地でした。
採石された後の山肌の岩が鋸の歯状に見えることから鋸山と呼ばれるようになったそうです。



この後、階段を上り「十州一覧台」へ向かい眺望を楽しんだ後は、下山開始です。



写真は「維摩窟」

復路は往路と重ならないように千五百羅漢道を大仏広場へと向かいます。


奥の院無漏窟への道



写真は「日牌堂」

今まで見てきた石仏も含めて、ここに安置されている石仏(羅漢像)はほとんど首が落ちており、
首がついていても、修復されたものでその接合の様子がハッキリ分かります。
これは明治の廃仏毀釈で破壊されたものだそうです。明治維新後に新政府は、仏教は外来の宗教であるとして、神道を国家統合の基幹にしようと意図し 「神仏分離令」を発しましたが、それにより仏教俳斥を引き起こし、結果として廃仏運動として仏像が破壊されました。国の都合による蛮行ですね。

写真は「甚五郎の墓」

上総桜井の名工、大野甚五郎は1779年〜1798年の21年間で、
門弟27名と共に生涯をかけ1,553体の石仏を刻みました。

写真は「百躰観音」



大仏広場の横を下り、朝来た山門を抜けて境内を出ます。
静かな道を駐車場へと向かいます。



到着

13時06分。スタートから3時間33分。
鋸山保田口駐車場に到着です。
天気にも恵まれ、楽しい山歩きの次は温泉と海の幸が待っています。


立ち寄り湯


海辺の湯】千葉県富津市金谷525-17
入浴料850円(平日750円)9時00分〜21時00分(平日10時00分〜20時30分)Pあり、0439-69-8500
金谷港から国道127号線を木更津方面へ3分程行った左手の海岸沿いにある、日帰り天然温泉です。同じ敷地には漁師料理「かなや」があり、 美味しい海の幸も食べられる大きな施設です。温泉施設は2階で、1階にはお土産コーナーがあり海の幸や千葉県の名産を買う ことができます。エレベーターで2階に上がり、靴を100円が戻ってくるロッカーへ預けます。受付横の自販機で入浴券850円を購入し、受付で 購入した入浴券と靴ロッカーのカギを渡すと、引き換えに脱衣ロッカーのカギを渡されます。建物全体の大きさからすると温泉施設は少し小じんまり した印象です。脱衣場には左側にロッカーが87個並んでおり、洗面台は2つで無料のドライヤーも2つ備え付けられています。浴室に入ると洗い場は 11ヵ所あり、広さに応じた数です。当日は日曜日でしたが洗い場に空きがあるなどゆったり入浴を楽しむことができました。お風呂は大浴槽と水ぶろ、 サウナがあり、外壁は全面ガラス張りで海沿いにあることから東京湾と一体になり、まるで東京湾そのものに入っているような錯覚を覚えます。 ベランダのようになっている露天風呂はやはり低いガラスで全面囲まれていますが、屋根が無い分さらに解放感にあふれています。 お湯は黒というか濃い茶色というか、醤油を薄めたそばつゆのような色をしています。匂いは無くサラサラした感じで、体が温まりました。
入浴後は同じ施設の2階に畳敷きの食事処もありますが、ここは絶対に隣接している漁師料理「かなや」へ移動し、海の幸をいただくべきです。ネタは 新鮮で美味しくそのうえボリュームもあり、さすが漁港まで来たかいがあったというものです。



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