(基本戦術)

Home
1. Tactical(戦術的)に点を取る



  Tactical
(戦術的)とは分かり易く言えば、ゲームで相手に勝つための方法についてです。
 ゲームで相手に勝つためには点を取ることが必要であり、そのためには相手のミスによる得点以外は、自分のショットで得点しなければなりません。自分のショットで得点することとは、自分の打ったボールが相手に拾われることなく床で2回バウンドすることです。
  次に、自分の打ったクロスコートともに低く速いボールが床に2回バウンドする状況について考えます。コートには自分と相手しかいませんから、状況は相手とボールとの関係で区別できます。
 基本的に自分のショットで得点するには、下記の三種類の状況しかありません。

(1)ボールが相手の前方で2バウンドする
(2)ボールが相手の後方で2回目のバウンドをする
(3)ボールが1回目のバウンドでニックに入り弾まない

 (3)のボールが1回目のバウンドでニックに入り弾まない状況とは、偶然を除けば意図的にニックを狙ったショット(ニックショット)であり、これにはTechnical (技術的)な習熟が求められます。ニックショットについては別の項で触れるとして、この項では(1)と(2)の状況に注目します。
 では、どうすれば(1)か(2)の状況を作れるか。
 スカッシュのゲームでは相手が“T”にいる場合、ニックショット以外は相手に拾われます。つまり、相手が“T”にいる場合、1本のショットで得点することはできないということです。プレーヤーのレベルによりますが、中級者以上はTactical(戦術的)にはそう考える必要があります。
 得点するには、1本目のショットで相手を“T”から何れかのコーナーに走らせ、相手が“T”に戻る前に反対側のコーナーに2本目のショットを打たなければなりません。これを上記の(1)、(2)の状況に当てはめると以下のようになります。

(1)相手をバックコーナーに走らせ、“T”に戻る前に次のショットをフロントコーナーに打つ
(2)相手をフロントコーナーに走らせ、“T”に戻る前に次のショットをバックコーナーに打つ

 本稿では、1本目のショットをPressure Shot、2本目をWinning Shot と表現します。  
Pressure Shot
・・・相手を“T”から追い出すショット
Winning Shot・・・実際に得点するショット
 
(1)のPressure Shot はストレートかクロスコート、Winning Shot はドロップショットになります。
(2)のPressure Shot はドロップショットかボースト、Winning Shot はストレートかクロスコートになります。

 Pressure Shot の目的は、相手を“T”から追い出し、“T”に戻る時間を与えないことです。ストレート、クロスコートともに低く速いボールでなければなりません。ストレートは2バウンド目がバックコーナーにいくように打ちます(P−1)。クロスコートは2バウンド目がバックコーナーにいくように打つか(P−2)或いははじめにサイドウォールに当たり、次に床で弾み2バウンド目がバックニックにいくように打ちます(P−3)
  また、ドロップショットはニックを狙い、ボーストは2バウンド目がニックにいくように打ちますいずれも相手を‘T’から最も遠い位置に走らせるためです。

 

 Winning Shot は、相手が“T”に戻る前に打たなければなりません。とにかく早く打つことが必要です。良いPressure Shot の後であれば、相手のショットはある程度予測出来ます。可能な限り予測し早く打つことが有効です。
 中級者以上のゲームでも1本のショットで得点できることはあります。しかし、それだけに期待していてはTactical(戦術的)な面による実力アップは見込めません。
 意図を持ってショットを選択し、理詰めで攻めれば得点出来る確率は高まります。Pressure Shotを打ち、次にWinning Shotを打って得点するという意識を常に持つことが重要です。

 Pressure Shot+Winning Shot の基本4パターンのアニメーションが右にあります。クリックして参照してください。

Case A:ストレート  + ドロップ
Case B:クロスコート + ドロップ
Case C:ドロップ   + ストレート
Case D:ボースト   + ストレート



2. Tactical(戦術的)に攻める


Home




  スカッシュコートには、自分とボール以外に相手もいます。良いショットとは、ショット自体が良いだけでなく、相手との関係においても有効でなければなりません。この項では、ゲームの中でのTactical(戦術的)な攻め方について述べます。
 ゲームの中で高い確率で得点するには、効果的なPressure Shot が必要です。Pressure Shot の目的は相手を“T”から追い出し“T”に戻る時間を与えないことですから、ボールが速ければそれだけ有効になりますが、ここでは別のことに注目します。
 ボールが速いことは相手がボールに追い付き難いため有効なのですが、これはボールへの相手のスタートを遅らせても同じことです。つまり、相手のスタートを遅らせれば、Pressure Shot はより効果的になるということです。それには以下の2点が必要になります。

(1)2種類(以上)のPressure Shot が打てる位置から打つ
(2)2種類(以上)のPressure Shot を出来るだけ同じフォームで打つ

 (1)について、2種類のPressure Shot が打てれば、相手はその両方について意識しなければならないため、ひとつひとつのショットに対する準備は散漫になり相手のスタートを遅らせることが出来ます。
  また、2種類のショットのコースは互いに距離が離れてなければなりません。一方がフロントコーナーで、他方はバックコーナーになります。具体的には、ストレートとドロップショット、ストレートとボースト(P−4)、クロスコートとドロップショット(P−5)等です。フロントコーナーとバックコーナーのショットが含まれていれば、相手に意識させるショットの種類は多いほど有効です。

 

 


 次はPressure Shot を打つ位置についてです。相手に意識させる2種類(以上)のPressure Shot には必ずバックコーナーへのショット、即ちストレートかクロスコートが含まれています。前項で述べた通り、Pressure Shot のストレートとクロスコートは低く、速く、2バウンド目がバックコーナーにいくか、クロスコートははじめにサイドウォールに当たり2バウンド目がバックニックにいかなければなりません。
  そのためには、ある程度フロントウォールに近づく必要があります。フロントウォールに近ければ、より速いボールが打てるからです。
 つまり、その範囲はプレーヤーのパワーによりますが、だいたいサービスボックスの後ろのラインより前方になります。ラケットを強く振れない壁際や、相手の攻めによって余裕を持ってボールを打てない場合は除きます。

 (2)について、2種類(以上)のPressure Shot を同じようなフォームで打てれば、相手はどのショットが来るのか判断するのが遅くなり、スタートを遅らせることが出来ます。複数のショットを同じフォームで打つには高度な技術もありますが、ここでは基本的なことについて述べます。

 ラケットの動きについて、右利きプレーヤーのフォアハンドの場合、上から見るとラケットヘッドはグリップを中心に反時計方向に回転します。回転を速めることできますが、一瞬でも逆回転させることは不可能です。
 次にラケットの回転とショットの関係を考えると、回転の早い段階でボールに当たればボーストになり、もう少し回転して当たればストレート、更に回転すればクロスコートになります。
 つまり、ボーストからストレート、ストレートからクロスコートの変更は可能ですが、その逆は不可能だということです。
 ゲーム中にPressure Shotを打つ場合は、常にボーストを打つタイミングでボールに近づくことが重要です。タイミングを早めることにより他のショットに変更できるので、結果として相手の判断、ボールへのスタートを遅らすことが出来ます。
 同じコース、同じ速さのショットでも打ち方を工夫すれば、相手にとっては全く別のショットに見えることがあります。

 ショット練習の時から、どの位置でどのように打てば、相手にはどう見えるかを考えることが重要です。



3. Tactical(戦術的)に守る

Home




  Pressure Shot を打つ位置、打ち方について前項で述べましたが、ゲーム中には当然Pressure Shot が打てない状況があります。バックコートへのPressure Shot が打てないコートの後方から打つ場合、ボールが壁際にある場合、そして相手の攻めによって余裕を持ってボールを打てない場合です。
 この場合は相手に得点されないことを考えます。前項で述べたように、Pressure ShotWinning Shot によって得点する訳ですから、相手がPressure Shot を打てない位置に自分が打てば得点されないことになります。
  Pressure Shot の打てない位置とは、コートの後方か壁際でしたが、ここでは最も安全なバックウォール付近の壁際を狙い、ボールのスピードは自分が“T”に戻れるのに充分なほど遅くします。また、相手にボレーされることを避けるため用心深くコースを狙い、結果としてロブショットを多用することになります(L−1)(L−2)

 本稿では、このショットをSafety Shot と表現します。

 Safety Shot・・・相手に攻めるチャンスを与えないショット

 Safety Shot を選択すべき状況でも、リスクを冒せばPressure Shot を打つことはできます。特に劣勢の試合では、そうしたくなることが多いようです。しかし何度かは成功しても、一試合を通して考えれば相手にチャンスを与える事の方が多いはずです。

 守るべき状況だと判断したら、得点することは完全に諦めてSafety Shot を打つことが重要です






4. Tactical Chart
(戦術系統図)

Home




  この項では、実際のゲーム中どのように考えてプレーするかについて述べます。
 ラリー中にショットを選択するときにまず考えるべきことは、その局面が得点を取りに攻める時か、或いは相手にチャンスを与えないように守る時かということです。自分のショットで得点するにはニックショットか、Pressure Shot とその後のWinning Shot で得点する2つの方法しかありません。何れかの方法が可能であれば、その局面は攻める時であり、それ以外は守る時だということになります。相手の位置と自分がボールを打つ状況から、攻めるか否かをまず判断しなければなりません。
 守ると判断した時はSafety Shot を打つことになり、その中で最も相手にチャンスを与える可能性の低い安全なショットを選択します。
 攻めると判断した時は、ニックショットを選択した場合はニックに狙って打つだけです。
 Pressure Shot を打つ場合は、相手をフロントコーナーに走らせた後にバックコーナーにWinning Shot を打つのか、バックコーナーに走らせた後にフロントコーナーにWinning Shot を打つのかを決めます。前者はドロップショットやボースト、後者はストレートやクロスコートを選択する事になります。

 次のショットは、Pressure Shot に対する相手の対応によって決まります。相手を十分に“T”から追い出すことができたらWinning Shotを、不十分なら再びPressure Shot を打つことになりそれぞれショットを選択します。また、Pressure Shot が思い通りに打てず攻めれない局面になった場合はSafety Shot を打つことになります。

 

 以上のように、状況を判断してショットを選択していく流れを図にしたものが別紙Tactical Chart(戦術系統図)になります。図の隣合う各項目の関係は常に『目的』⇔『手段』にあります。「試合に勝つ」という『目的』のために、「得点する」という『手段』と「失点しない」という『手段』があり、次に「得点する」ということが『目的』とすると、右側にある項目がその目的のための『手段』になるということです。そして最終的な手段として実際の各ショットがあるわけです。 つまり、すべてのショットは「試合に勝つ」という『目的』のために選択するのです。

 常にTactical(戦術的)な目的に基づいてショットを選択することによって、如何なる試合展開においてもパニックに陥ることなくプレーすることができ、試合に勝つ確率を高めることができます


created by 野口かつじ

K. Noguchi © Copyright 2005, All rights reserved